筆者は医師でも看護師でもなく、医療機器の専門家でもありません。あくまで「災害対策としてポータブル電源を調べている一般人」の立場から、メーカー公式情報、自治体の助成制度、SNSの情報などを調査し、整理した内容です。
医療機器とポータブル電源の組み合わせについては、必ず以下の専門家にご相談ください:
この記事は「判断材料を提供すること」が目的であり、「医療的な推奨」をするものではありません。最終的な判断は、必ず医療の専門家の指導のもとで行ってください。
エコフロー公式の注意書き:
「医療機器、生物や生体組織の飼育、培養、保管機器、医療品類の保管用冷蔵庫など、電源が切れると生命や財産に損害を受ける恐れのある機器を使用しないでください。」
引用:公式サイトより
一方で、全国の自治体が、「在宅で人工呼吸器を使用している方」に対して、ポータブル電源購入の助成金を支給しています。
⚡ この記事でわかること
- メーカーが医療機器使用を非推奨とする理由
- 自治体が助成金を出している現実
- 医療機器使用者が取るべき正しいステップ
- ポータブル電源を使う場合の重要な注意点
繰り返しになりますが、本記事の情報は参考程度に留め、実際の使用については必ず医療の専門家(主治医、医療機器メーカー)にご相談ください。
メーカーの公式見解:なぜ「非推奨」なのか
エコフロー公式の使用禁止事項
エコフロー公式サイトおよび全製品の取扱説明書には、以下の記載があります:
【使用禁止機器】
- 医療機器
- 生物や生体組織の飼育、培養、保管機器
- 医薬品類の保管用冷蔵庫
- その他、電源が切れると生命や財産に損害を受ける恐れのある機器
これは、DELTA 3、DELTA Pro 3など、すべてのエコフロー製品に共通する事項です。
メーカーが非推奨とする理由
エコフローがこう記載するのには、明確な理由があります。
1. 製品責任上の問題
- ポータブル電源は「一般家庭用」として設計・認証
- 医療機器用の認証(IEC 60601-1など)は取得していない
- 万が一のトラブル時、メーカーは責任を負えない
2. 技術的な限界
- UPS切替時間(10ms〜20ms)が医療機器の要求仕様を満たさない可能性
- 波形品質が医療機器の厳格な基準と異なる場合がある
- バッテリー残量表示の誤差(±5〜10%)
- 低温・高温時の性能低下
3. 動作保証ができない
- すべての医療機器での動作確認は不可能
- 機器の組み合わせによる予期しない不具合
- 経年劣化による性能変化
つまり、「絶対に使えない」というより「動作を保証できないので推奨できない」というのが正確です。
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自治体が助成金を出している現実
引用:千葉県香取市の助成金の内容
※画像内の「正弦波インバーター発電機」とは、ポータブル電源を含みます。
全国で広がるポータブル電源助成制度
例:千葉県香取市の場合
対象者:
- 在宅で人工呼吸器若しくは電気式たん吸引器を使用している方
- 呼吸器機能障害3級以上の身体障害者
- 医療保険における在宅酸素療法を行う方
助成内容:
- ポータブル電源(蓄電池):基準額100,000円
- DC/ACインバーター:基準額30,000円
- 正弦波インバーター発電機:基準額120,000円
補助率:
- 市民税課税世帯:基準額の9/10相当額
- 市民税非課税世帯・生活保護世帯:基準額の10/10相当額
自治体の立場:災害時の最終手段として
重要な注意事項(香取市の例):
「人工呼吸器などの精密医療機器はコンセントからの直接使用を原則としているため、一般に市販されている発電機や蓄電池等は、精密医療機器に使用した場合の動作保証までは行っていません。そのため、お使いの医療機器取扱業者の方と相談するなど十分検討したうえで申請してください。」
「当該補助により購入した用品の使用による医療機器等の故障や不具合が生じた場合に、市はその責任を負うことはできません。あらかじめご承知おきください。」
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この矛盾をどう考えるべきか
メーカー vs 自治体の立場の違い
メーカーは「使うな」、自治体は「買ってください」…結局どうすればいいの?
この矛盾は、それぞれの立場の違いから生まれています。
メーカーの立場
- 製品の製造者として、動作保証できない用途は推奨できない
- 医療機器用の認証を取得していない以上、責任を負えない
- 法的リスクを避ける必要がある
自治体の立場
- 災害時、在宅医療機器使用者の命を守る必要がある
- 「理想的な医療用UPS」が高額で入手困難
- 「完璧ではないが、何もないよりマシ」という現実的判断
- 医療機器メーカーへの相談を前提条件としている
現実的な解釈
この状況をどう理解すべきか:
- 理想:医療機器メーカー推奨の専用UPS
- 最も安全で確実
- しかし高額で入手困難な場合がある
- 現実:ポータブル電源は「次善の策」
- 完璧ではないが、災害時の最終手段
- 医療機器メーカーへの相談が絶対条件
- 自己責任での使用
- 絶対条件:複数のバックアップ体制
- ポータブル電源だけに頼らない
- 医療機関との連携
- 自治体の支援制度活用
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医療機器使用者が取るべき正しいステップ
医療機器を使用している方が、ポータブル電源を検討する場合の正しいステップを説明します。
ステップ1:医療機器メーカーに必ず相談
最優先事項:医療機器メーカーへの確認
確認すべき内容:
- ポータブル電源での使用可否
- 推奨されるバックアップ電源の種類
- 必要な電源仕様(波形、切替時間など)
- 使用時の注意事項
- 動作確認の方法
重要:書面で記録を残す
- 口頭だけでなく、メールや書面で回答を得る
- 「使用可能」と言われた場合も、条件を明確にする
- トラブル時の証拠として保管
ステップ2:主治医・医療機関に相談
医師の見解を確認
- 停電時の対応マニュアル
- ポータブル電源使用についての医学的見解
- 緊急時の連絡体制
ステップ3:自治体の助成制度を確認
利用可能な支援制度を調べる
確認すべきこと:
- 居住地域の助成制度の有無
- 対象条件(障害等級、医療機器の種類)
- 助成金額と補助率
- 申請方法と必要書類
助成制度の例(2025年時点):
- 東京都:多くの区で助成あり
- 千葉県:香取市、八千代市など
- その他:全国で拡大中
検索方法: 「[市区町村名] ポータブル電源 助成金 医療機器」で検索
ステップ4:複数のバックアップ体制を構築
ポータブル電源だけに頼らない体制
推奨される多層防御:
第1層:医療機器メーカー推奨の方法
- 専用UPS装置(可能な場合)
- バッテリー内蔵型への切替
第2層:ポータブル電源
- 容量は医療機器の24時間分以上
- 定期的な動作確認(月1回以上)
- 充電状態の維持(常に80%以上)
第3層:発電機(医師の許可を得て)
- 屋外専用
- ポータブル電源の充電用
「ポータブル電源があれば安心」ではなく、「ポータブル電源は複数の備えの一つ」という考え方が重要です。
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ポータブル電源を使う場合の重要な注意点
医療機器メーカーの許可を得た上で
前提条件:
- 医療機器メーカーから「使用可能」の回答を得ている
- 推奨される仕様を満たしたポータブル電源を選定
- 書面で記録を残している
製品選びの重要ポイント
1. 容量の選定
計算方法:
必要容量(Wh) = 医療機器の消費電力(W) × 24時間
例:CPAP 50Wの場合
- 基本:50W × 8時間(夜間使用)= 400Wh
- 電気量の余裕を持たせて:400Wh × 2.0 = 800Wh
- 推奨:DELTA 3(1,024Wh)以上
例:酸素濃縮器 350Wの場合
- 基本:350W × 24時間 = 8,400Wh
- 現実的な範囲:短時間の停電対応 → 350W × 4時間 = 1,400Wh
- 推奨:DELTA 3 1500(1,536Wh)以上
- 理想:DELTA Pro 3(4,000Wh)+ 拡張バッテリー
2. UPS機能の確認
| 製品 | UPS切替時間 | 医療機器への適性 |
|---|---|---|
| DELTA 3シリーズ | 20ms未満 | 医療機器メーカー確認必須 |
| DELTA Pro 3 | 10ms未満 | 医療機器メーカー確認必須 |
注意:切替時間が短くても医療機器メーカーの確認は必須
使用時の重要な注意事項
1. 定期的な動作確認(月1回以上)
確認内容:
- 実際の医療機器での動作テスト
- バッテリー残量の正確性確認
- 充電機能の確認
- 異常の早期発見
2. 充電状態の維持
- 常に80%以上の充電状態を維持
- 月1回は満充電
- 長期未使用時の劣化を防ぐ
3. 使用環境の管理
- 温度:0℃〜40℃の範囲
- 湿度:直射日光・高湿度を避ける
- 換気:充電時の熱対策
4. バッテリー残量の把握
- 表示残量に±5〜10%の誤差がある
- 余裕を持った電力管理
- 残量30%を「限界」と考える
5. 緊急時の行動計画
ポータブル電源が使えなくなった場合:
- 即座に医療機関に連絡
- 予備の対応(発電機、避難など)
- 家族の役割分担を事前に決めておく
絶対にやってはいけないこと
❌ 医療機器メーカーへの確認なしで使用
❌ ポータブル電源だけに頼る
❌ 動作確認をしない
❌ バッテリー残量を過信する
❌ 使用環境を軽視する
エコフロー製品の選び方(医療機器バックアップ用)
医療機器別の推奨製品
前提:医療機器メーカーの許可を得た上で
| 医療機器 | 推奨製品 | 容量 | 価格(税込) | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| CPAP(50W×8時間) | DELTA 3 | 1,024Wh | 139,700円 | 400Wh必要→安全係数2.5倍で1,024Wh |
| CPAP(長期対応) | DELTA 3 1500 | 1,536Wh | 181,500円 | 余裕を持った対応 |
| 電気式たん吸引器(100W) | DELTA 3 | 1,024Wh | 139,700円 | 2,400Wh必要(24h)→短時間利用可能 |
| 酸素濃縮器(350W) | DELTA Pro 3 | 4,000Wh | 539,000円 | 8,400Wh必要(24h)→短時間利用可能 |
| 人工呼吸器(100W) | DELTA Pro 3 + 拡張 | 最大12,000Wh | 900,000円〜 | 24時間以上の対応必須 |
重要な注意:
- 上記はあくまで目安です
- 医療機器の実際の消費電力を確認
- 使用時間を現実的に計算
- 医療機器メーカーの推奨を最優先
生活家電用と分けて考える
重要な考え方:
医療機器用(最優先)
- ポータブル電源(医療機器メーカー確認済み)
生活家電用(別途用意)
エコフローのポータブル電源 (冷蔵庫・照明・冷暖房など)
なぜ分けるべきか:
- 医療機器に全容量を確保できる
- 生活家電の使用で医療機器用電力が減らない
- リスク分散のため
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まとめ
重要なポイントをまとめます
✓ メーカーは医療機器使用を「非推奨」としている
- 動作保証ができない
- 医療機器用の認証がない
- 法的責任を負えない
✓ 自治体は災害時バックアップとして「助成」している
- 「理想的ではないが、何もないよりマシ」という判断
- 医療機器メーカーへの相談を前提条件としている
- 自己責任での使用
✓ 医療機器使用者が取るべき対応
- 医療機器メーカーに必ず相談(最優先)
- 主治医・医療機関に相談
- 自治体の助成制度を活用
- 複数のバックアップ体制を構築
✓ ポータブル電源を使う場合の絶対条件
- 医療機器メーカーの許可
- 定期的な動作確認(月1回以上)
- ポータブル電源だけに頼らない
- 医療機器専用として使用
■生活家電用としても活躍
医療機器用には慎重な判断が必要ですが、生活家電用としてはエコフローのポータブル電源が大活躍します。
災害時の生活を守る:
- 冷蔵庫(食料保存)
- 照明(安全確保)
- 冷暖房(体調管理)
- スマホ充電(情報収集)
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